流暢でなくても、よろめきながらでも、「自分の言葉」で他者に想いを伝える。

吃音があるからこそ、伝わる気持ちがあるということを知っていますか?

当記事にてお勧めする書籍『吃音ワークブック』に綴られた素敵なエピソードからご紹介します。

著者の伊藤伸二さんの友人の中に、結婚式の友人代表のスピーチを行った方がいます。

当初、スピーチをお願いされると酷くどもってしまうことが目に見えていたため断りましたが、『どうしてもおまえにやってもらいたいんだ』と、再度強く頼まれたことにより不安ながらも承諾しました。

当日は、やはり酷くどもってしまいました。

しかし、その友人代表スピーチを聞いていた出席者の中に『こんな誠実な人と娘を結婚させたい』と思った人がいました。

後日、そんな父親の勧めによってお見合いの場が設けられ、結婚にまで至ったといいます。

どもらないことだけを考えて「おめでとう」を言っても、聞く人の心を捉える力はなかったと思います。
どもることよりも、友人に『自分の言葉』で心からの「おめでとう」を送ったことにより掴んだ幸せではないでしょうか。

この記事は吃音がある子どもを持つ親に向けに書いていきたいと思います。

吃音があるあなたの子どもは、これから様々な困難に遭遇することでしょう。
僕も小さい頃から吃音があって、嫌な思いは掃いて捨てるほどしてきました。

それでも就職して仕事もしているし、結婚もすることができたし、今では4人の子どもを持つ父親として幸せな人生を歩んでいます。

吃音があるからといって必要以上に心配する必要はありませんが、一人で悩むことがないように日頃から吃音に対してオープンな関係を築いておくことは大切です。

吃音者は吃音について意外と無知です。
吃音が無ければ尚更です。

子どもと一緒に吃音を学ぶことも、オープンな関係作りとして取り組んでみてはいかがでしょうか?

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吃音についてオープンな関係が勧められている理由について

ひと昔前までは『どもり』という言葉は差別用語として扱われ、吃音に関する話題はタブーとなっていました。
これは家庭内においても変わらず、子どもにあまり吃音を意識させないように努めることが、親の正しい対応であると信じられてきました。

しかし現代においては真逆のことが推進されていて、吃音に対してオープンにすることを勧められています。

なぜ吃音をオープンにすることが良いのかというと、一つはカミングアウトすることで気持ちに余裕ができるためです。
どもらないように、どもらないように、と隠していると常に気を張っていなければなりません。
カミングアウトしたことで、以前より安心して学校生活を送れるようになったという人は多いです。
また心に余裕が生まれ、吃音の症状が低減するといった良い循環が生まれるといいます。

二つ目として社会的な考え方による変化です。

これまで障害は『医学モデル』という考え方に基づいて、個人の課題であるとして支援や配慮を受けるために手帳取得が唯一の手段でした。
しかし時代の流れから『社会モデル』が提唱されるようになり、障害は社会の障壁によって作り出されるという考え方から、社会的障壁の除去が図られるようになりました。

つまり、障害は『個人の課題』から『社会の課題』へと変わったのです。
吃音も2005年に施行された発達障害者支援法によって、発達障害であることが明文化されています。

とはいえ、学校やクラブなどにおいてカミングアウトすることはなかなかできることでありません。
だからこそ、家庭内だけでもオープンに接してあげたいものです。

オープンな関係は『ゼロの地点』から

オープンな関係が大事なことは分かった。

でも実際に子どもと吃音に関する話しをしようとする時、どんな事を聞けばよいのか、どんなアドバイスをすればよいのか、正直分かりませんよね。

よく参考書などで見かける”悪い例”の様に

「もう一度言ってごらん」
「焦らないでゆっくり話してごらん」
「落ち着きなさい」

などとアドバイスをしてしまっては、逆効果になることも。

上記の様なアドバイスは発声に関する指摘となっていて、どもりを否定する言葉です。
つまり「あなたの話し方はおかしいのよ」と言っていることなります。

吃音がある子どもや親は、一つ、決断しなければいけないことがあります。

それは『吃音は治らない』と覚悟を決めて、『吃音とどう付き合うか』を考えていくことです。
これを伊藤伸二さんは『ゼロの地点に立つ』といいます。

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子どもと一緒に吃音の意味を考える

吃音治療は100年以上の歴史があるにもかかわらず、いまだ原因が不明で、治療の確立もされていません。
つまり親が子どもに適切なアドバイスをすることは、残念ながらそう多くはありません。

子どもに適切なアドバイスをするよりも、子ども一緒になって吃音を学び、子どもと一緒になって吃音との付き合い方を考えることが、親のできる精一杯なのではないでしょうか。

ここでご紹介したいのが、伊藤伸二さんの書籍『吃音ワークブック』です。

吃音ワークブックでは、例えば

  • どんな時にどもるか
  • どもりは治るか
  • 吃音方程式
  • 言語関係図を作ろう
  • 吃音の氷山を書いてみよう
  • どもカルタを作ろう

など、16のワークが用意され子どもと一緒になって吃音を考えるテーマが与えられています。

私(親)はこう思うけど、あなた(子ども)はどう?

そんなやりとりができれば、子どもが

  • どんなことに不安があるのか
  • どんなことに困っているのか
  • どのように接してほしいか

そんな深層心理の部分がきっと引き出せるはずです。

ただ漠然と『学校生活が心配』とか『将来が心配』などと考えているだけではなく、『日直の時の号令がなかなか言葉がでてこないから困っている』とか『将来は学校の先生になりたいのだけれど人前で話すことに心配がある』など具体的な話しを聞けるようなります。

『日直の時に号令がうまく言えない』という話しを引き出すことができれば、先生に配慮をしてもらうよう働きかけることができます。

子どもの過ごしやすい環境を作ってあげることで、どまりながらでも話しをするようになるし、話すことを続けていれば吃音は変化していくと伊藤伸二さんは語っています。

治らなくても、僕は大丈夫

「どもりを治したい」という考えから「どもりは治らない、どもりと上手につきあっていこう」と考え方にシフトすることを、伊藤伸二さんの言葉では『ゼロの地点の立つ』といいます。

伊藤伸二さんは21歳の時に、僕は25歳の時にゼロの地点に立ちました。

伊藤伸二さんは吃音矯正所を通じて、僕は吃音改善プログラムを通じて立つことができました。

このゼロの地点に立つのは早ければ早いだけいいです。
地面を這いつくばる青虫と、大空を羽ばたく蝶ぐらいの違いがそこにはあります。

伊藤伸二さんが主催する吃音者が参加するサマーキャンプでは、小学生の子が「治らなくても僕は大丈夫」と話すといいます。

これは子どもはもちろん、その親の努力と決断の賜物でしょう。

次はあなたの番です。

自助グループで活用できる

日本で最も規模の大きい、また最も歴史のある当事者の集いは『言友会』です。

この言友会を創設したのが、当記事にてご紹介した書籍『吃音ワークブック』の著者である伊藤伸二さんです。

言友会は全国に支部を持ち、毎月行われる例会に加え、年に数回は全国の支部が一堂に会する大会も開催されるなど、精力的な活動により当事者の支えとなっています。

最近では若者が集まる『うぃーすた』や音楽を通じて親睦を深める『ジークフリーツ』、地元の当事者が集う会など多くの自助グループが誕生してきています。

そんな集まりの中で、伊藤伸二さんの書籍『吃音ワークブック』で用意されているテーマについて、意見交換することも大変有意義であると思います。

自助グループに参加している人の中には、吃音を治したくて入ってきた人達も中にはいると思います。

そんな方々へ、伊藤伸二さんの考え方に触れさせることによって、新しい気付きとなるかもしれません。

僕としましては『吃音は治らない』とは思いたくありません。

いつの日かどもらない感覚というものを味わってみたいという願望があります。
当サイトにて記事を書き続けている理由も、いわば吃音を治す手掛かりを探す旅の日記みたいなものです。

その反面で、僕は吃音を歓迎しています。

吃音によって様々な困難や苦痛を味わい、これからも続くでしょう。
でもそれと同じか、それ以上に大切な教えを吃音から貰っていると思っています。

こんな自論についても『吃音ワークブック』を使いながら、自助グループの皆で話し合いができれば、よりお互いの親睦を深めることができるでしょう。

今の時代、自宅で吃音の治療が受けられます