本書で収められている4タイトルには、著者の大木亜希子さんを彷彿とさせるヒロイン達の生々しい生き様が描かれています。

大木亜希子さんのエッセイ『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』で、彼女の「人となり」を多少なりとも知っているだけに、『シナプス』の木村塔子、『風俗嬢A』の平野紗英、『MILK』の藤井楓が各タイトルのヒロイン達が大木亜希子さんとカブる。
作者(それも大好きな)を彷彿とさせる小説はこれまで出会った経験がなく、僕としてはとても『新しい唯一無二の小説』となりました。

本書は短編4タイトルを掲載した小説となっているのですが、次は長編小説としてじっくり腰を据えて読める作品を期待してしまいます。

シナプス

画像
評価
★★★
出版社
講談社
発行日
2022/3/2
購入先
Amazon公式サイトへ

という、前置きは置いておいて・・・。

男目線での話をしようと思う。
うん。

大木亜希子さんは自身の著書をいくも出版している作家です。
エッセイ『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』ではアイドル時代のこと、アイドルを卒業したときのこと、おっさんと住むようになったこと、作家という天職を見つけたときのことなど、自身の半生を赤裸々に語っています。
また「元アイドル」という自身と同じ境遇の人達からのインタビューから生まれた『アイドル、やめました』では、世の中で強く生きていく女性の姿をドキュメンタリーとして形にしました。

大木さんの書く文章は「大木節」というか、突如として乱暴な言葉をあえて使うところが僕は大好きで、普段はお淑やかな完璧な女性になりきるオカマの人が、笑いどころとして使う「男の声」で笑いを掻っ攫うオカマバーでのやり取りを思い出す。
そんな高度なテクニックを使う大木さんの文章は、もちろん上手だと思います。

文章が上手い、アイディアや発想が素晴らしいというだけではなくて、大木さんといえばやっぱり「元アイドル」としての美貌も欠かせません。
やっぱり美しい女性というのは、それだけでも魅力的ですよね。

んで、伏線を散りばめておいたので回収といきますが、本書の見所は【ヒロインのセックスシーン】です!

想像以上にエッチな描写が多く、朝の通勤電車の中で読書タイムを設けている僕にとっては、ちょっと刺激が強すぎるほど。
つり革に捕まったまま読めるほど、平坦な作りにはなっていませんでした。
ヒロインのセックスシーンは本書の4タイトルで至る所に描写され、それは『シナプス』というタイトルを捲るとすぐにやってきます。

ヒロインは大木さん自身をモデルに描いたような、「彷彿」とさせると言うよりも「カブる」と言った方がしっくりくる。
姿、性格、立ち振舞い、考え方。これまで大木亜希子さんのエッセイを読んで持ったイメージを本作のヒロイン達が受け継いでいました。特に『シナプス』のヒロイン「木村塔子」の口調は大木さんそのものです。

つまりね、大木さんとセックスしているような。はたまた大木さんのAVを見ているような。読者の想像力次第でそんな擬似体験ができる小説なんです。

なので僕のおすすめとしては、大木さんのエッセイ『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』を読んでから、是非とも本書に目を通してもらいたいなと。

小説の中で作者をこれほどまでにイメージする作品は僕の中では初めてのことで、とても『新しい』と感じました。
次回作は是非とも長編作を期待してしまいます。

こんな男心を狙って書いたのだとしたら、大木さんはかなり【あざとい】なと思います。

シナプス

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評価
★★★
出版社
講談社
発行日
2022/3/2
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