繊細で敏感な気質を持つ人にとって、最も頭を抱える問題は『人間関係』ではないでしょうか?
HSPとHSSを組み合わせた4つのタイプに分けることで、無駄な争いを無くし、円滑なコミュニケーションを取れるようになります。
例えば、自然体で生きていたい人に対して、あまりに熱のこもった指導をしてしまうと避けられてしまったり。
穏やかに生きたいと思っている人に対して、リスクのある話しをしてしまうと、聞く耳を持ってくれなくなってしまいます。
良かれと思ってしたことが、相手にとってはありがた迷惑で、相手の反応によって自分もまた傷ついてしまうことってありませんか?
予め、この人はこんな考え方を持っているなと分かっていれば、仕事でも恋愛でも近所付き合いにだって役に立ちます。
HSPとは
HSPとはHighly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字を取った言葉で、アメリカの心理学者であるエレイン・N・アーロン博士が、1996年に提唱した言葉です。
五感に敏感で、感受性が豊かな気質を持っており、「感じる力」「考える力」「味わう力」「良心の力」「直感の力」は”HSPの5つの共通の力”と言われたりします。
一方で、HSPという言葉が生まれる前までは「気にし過ぎ」や「臆病者」といった言葉で片付けられてしまった気質でもあります。
HSPとそうでない人では『脳の神経システム』に違いがあるといわれており、現在でも多くの研究が続けられています。
人間に限らず、高等動物であるサルや馬・ネズミ・猫・犬などにも、刺激に対して敏感な反応を示す割合が一定数いて、だいたいどの種においても全体の15%〜20%に見られると言われています。
これは種として生き延びるために、慎重な個体が生まれたのではないかと考えられているそうです。
自分がHSPであるかどうかについて、HSPチェックリストがインターネット上には無数に掲載されていますので、誰でも簡単に確認することができます。
HSSとは
HSSとはHigh Sensation Seeking(ハイ・センセーション・シーキング)頭文字を取った言葉で、心理学者のマービン・ズッカーマン氏が提唱しました。
ズッカーマン氏は『ひといちばい刺激を探求する人たち』と表現し、変化や新しいことを好み、強い刺激と経験を求め、あらゆるリスクを選ぼうとする気質があることに気が付きました。
遺伝子の研究により、HSSの気質は遺伝的に決まる事が分かっています。
HSSの気質を持つ赤ちゃんは、活発に動き回るなど、生まれて数日で気質の違いは確認できるそうです。
新しいことにどんどんトライするHSSは、ひといちばい敏感なHSPとは正反対のように感じますが、2つの気質は完全に独立した別のもので、2つの気質を併せ持つ人もいます。
組合せによる4つのタイプ
ひといちばい敏感なHSPは全体の20%程度、
ひといちばい刺激を求める人はHSPの30%程度だと言われています。
またHSSの気質が遺伝的に決まっていることから、HSPではない非HSPの中にも30%程度いると仮定すると、
- 全体の56%
-
非HSP/非HSS
敏感:×
刺激:× - 全体の24%
-
非HSP/HSS
敏感:×
刺激:◯ - 全体の14%
-
HSP/非HSS
敏感:◯
刺激:× - 全体の6%
-
HSP/HSS
敏感:◯
刺激:◯
おおよそ上記の様な割合になることが分かります。
それば一つ一つについて見ていきましょう。
自然体に生きる 非HSP/非HSS (56%)
全体の約半数を占めるのは、いわば普通の人で、敏感すぎるHSPの気質も、刺激探求が強すぎるHSSの気質もない人達になります。
つまり好奇心が低く、あまり深く考えない傾向を持ち、シンプルに自然体に生きていると言えます。
僕が非HSP/非HSSの人で思いたるのは会社の後輩で、何度も同じミスを繰り返してはケロっとしているS君。
「このままだと将来は、本当に使えない人材になってしまうから、今のうちから勉強したり意識を変えなくてはいけないよ。」と熱く語っても、S君はS君のままでした。
好奇心が低く、自然体に生きたい彼にとって、他人の熱い気持ちは響かなかったのです。
好奇心旺盛な 非HSP/HSS (24%)
全体の4分の1を占める、刺激探求が強すぎる気質を持つ非HSS/HSS。
4人に1人は刺激を求める気質があるということです。
好奇心が強く、情熱的で、衝動的。
リスクをモノともしない行動力な上、飽きやすい。
細かい状況には気がつかず、そもそも関心もありません。
僕の友人には非HSP/HSSにピッタリなK君がいます。
子どもの頃から遊びに夢中で、「そんなことよく考えるな」というような独特な遊び方をしていました。
大人になってからも相変わらずで、定職に就かず好きな音楽をやって暮らしていました。
久しぶりに会ったK君は、オーストリア人の彼女を連れていて、英語がペラペラになっていて、その翌年、オーストリアに住むと言って日本を発ちました。
K君、どうしてるかなー。
穏やかに生きる HSP/非HSS(14%)
全体の1割程度となるHSP/非HSSの人達。
敏感過ぎる気質を持ち、刺激は求めない温厚派です。
思慮深く、穏やかな生活を送ることに幸せを感じており、衝動的に行動することはなく、リスクを引き受けることはしません。
僕の妻がまさにHSP/非HSSで、上記の特徴通りの人柄です。
感受性がとても高く、子どもの運動会や発表会などでは決まって涙を流し、感動的な映画やテレビを見ては涙を流します。
年2回実家に帰省するのですが、その帰りにもポロポロと涙を流します。
またリスクを極端に嫌い、僕が副業を始める時も、投資信託を始める時も、とても心配そうな顔をしては「大丈夫?騙されてんじゃないの?損しない?」と言ってきます。
僕の家には4人の子どもがいて、長女、長男、次男、三男と、男の割合が高いためか、想像を絶する賑やかさ。
「あー、もっと静かに、穏やかに生活したかったなー。」と妻がよくボヤきます。
子ども達が独り立ちしたら、穏やかに暮らそう。
多才で悩みが多い HSP/HSS(6%)
敏感過ぎるHSPと、刺激探求が強過ぎるHSSの両方の気質を持っているHSP/HSSは、全体の6%だと言われています。
HSPの慎重で思慮深いところと、HSSの衝動的な部分を併せ持ち、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような気質持ち、多才であるといいます。
一方で圧倒されやすく、同時にすぐに飽きるので、刺激の最適レベルの範囲がかなり狭いようです。
例えば、理想的な仕事があって、やれば絶対に良いアウトプットが出来ると分かっていても、始める段階から、それがいかに大変であるかも分かっているため、重荷に感じてしまい、やるか否かの葛藤に悩まされる。
こんなHSP/HSSの解決策は簡単で、2つの気質を中途半端に妥協させるのではく、気質の出番を調整すればいいのです。
HSSの気質から新しいプロジェクトを立ち上げたいと思っている場合、そのプロジェクトに大きなリスクが伴うのなら、刺激の探求は旅行で満たすことができるかもしれません。HSPの部分によって頑張り過ぎの刺激オーバーの状態なら、アシスタントを雇うと上手くいくかもしれません。
DOESという指標について
HSPの提唱者であるエレイン・N・アーロン博士によると、全てのHSPには「共通する4つの特性」があると言い、その4つの特性の頭文字をとってDOES(ダズ)と言われます。
逆を言えば、DOESの特性に対して一つでも当てはまらなければHSPでない可能性もあるということ。
HSPチェックリストとともに、DOESの指標を使えば、自分がHSPであるかどうかが明確に分かります。
Depth of processing(思考の複雑さ・思慮深さ)
まずは思考の複雑さ・思慮深さといった、考えや思いを巡らせ『深く処理をする』特性【D】について見ていきましょう。
- 想像力が豊かである
- 一つのことに没頭することがある
- 自分の考えや行動を深くかえりみる傾向が強い
- 論理的に筋道を立てて考える傾向が強い
- 表面的な世間話などが不得意である
- 行動に移すまでの考える時間が長く、引っ込み思案な面がある
僕は少年野球をやっていたのですが、その時に監督やコーチからよく言われた言葉が「切り換えろ」です。
チャンスの場面で打てなかったり、守備でエラーをしてしまうと、その場面のことをアレコレと考え込んでしまい気持ちまで落ち込んでしまうのです。
当然、その後のプレーにも影響してしまうので、どんどん声を出さなくなる僕に監督・コーチが一喝するのです。
ミスや失敗をしてもケロッとしている人を見ると人種の違いを感じます。
Overstimulation(神経の興奮しやすさ)
『過剰に刺激を受けやすい』という特性が【O】の項目になります。
- 人の感情に敏感である(他人の不機嫌さなどに緊張してしまうなど)
- その場の雰囲気を敏感に感じとる
- エピソードの一つ一つを人一倍強く感じる
- 恐怖感を覚えやすい
- 楽しいことも疲労につながる
友達との会食のあとは、何故か疲労困憊している
こんな経験がある方は、過剰に刺激を受けやすい特性【O】の典型例。知らず知らずのうちにダメージを蓄積させてしまうので注意が必要です。
Emotional reactivity and high Empathy(感情移入と共感性)
DOESの3つ目の特性【E】は『感情の反応が強く、共感力が高い』ことが挙げられています。
- 本や映画、芸術品、風景などに深く感動することがある
- 人に気を配り過ぎ、疲れることがある
- 友人の相談に乗って自分まで涙することがある
- 同僚が叱られているそばで本人よりダメージを受ける
他人が抱えている感情に反応しやすく、他者の経験を自分のことのように感じる特性が【E】となります。
僕の職業は技術者派遣なので、出来が悪いとすぐに契約を切られてしまい仕事を失ってしまいます。
仕事覚えが極端に悪い後輩がいて、このままでは契約を切られてしまうという時、飲みに誘って励ましていると、涙がボロボロと流れてきて声にならなかったという経験があります。
結局、この後輩、危機感0のまま5年も勤めることができたものの、コロナ禍の影響により契約を打ち切られ職を失いました。
とても図太い神経をしていた後輩Aくん。
同じ人種とは思えません。
Sensitivity to subtle stimuli(五感の鋭敏さ)
DOESの最後の特性【S】は『ささいな刺激を察知する』という項目です。
- 視覚情報(人混みや散らかった空間など)が多いと疲れる
- 突然大きい音がしたり、複数の音が混じった状態が苦手である
- 冷蔵庫の音や時計などの些細な音が気になる
- 布地のチクチク感が気になる
- 強い匂いを嗅ぐと気分が悪くなる
- カフェインの刺激に敏感である
- 食品添加物などの刺激を受けやすい
HSPは五感が敏感な人が多く、この特性をよく表しているように思います。
周りの人からすると「細かいなぁ」と思われることがほとんどですが、HSPの僕たちにとってはとても耐え難い刺激なのです。
僕も思い当たる節がいくつもあって、洋服のタグが気になってしまったり、複数の人から同時に話しかけられると思考停止状態に陥ります。
特に大きな音にも敏感で、授業中に先生が怒ると教壇を叩く音に、まいど過剰に反応してしまいます。
ひどい時には座っているのにジャンプしてしまうほどです。
編集後記:アーロン博士のおすすめ書籍
敏感すぎるHSPの気質と、刺激探求の強すぎるHSSの気質を組合せた4つのタイプ。
あなたはどのタイプでしたでしょうか。
僕は少数派のHSP/HSSでした。
僕は吃音という言葉の問題を抱えているのですが、吃音は全体の1%の人に見られると言われている症状で、自分はどんだけ希少種なんだよとツッコミを入れたくなりました。
吃音症だし、赤面症だし、高所恐怖症、閉所恐怖症もあって、おまけに先端恐怖症。
色々な悩みを抱えいますが、HSSである刺激探求の刃をコイツらに向け、一つ一つ解明していきたいと思う今日この頃です。
僕の拙い文章では、この概念のさわり程度しか理解できないと思います。
なので、もっとしっかりと知りたいと思った方は、心理学の分野で様々な功績をあげ、HSPという概念を提唱したエレイン・N・アーロン博士の書籍『ひといちばい敏感なあなたが人を愛するとき』を参考にしてみてください。