ここでは吃音のある人と吃音がない人との脳の構造や機能の違いについてお話します。
脳の構造や機能に関する研究は、アイオワ大学のエドワード・トラヴィスが1930年代に行って以来、継続して研究・調査が行われています。

 

よく吃音がある人は『感受性が高い』と言われます。

  • 人の気持ちに敏感だったり
  • 恐怖や不安が人一倍強かったり
  • 喜びや悲しみを大きく表現したり

僕も非常に敏感な体質をしていて、付き合っていた彼女にフラれる時は決まって「優し過ぎる」と言われました。
それに赤面症だし、先端恐怖症だし、閉所恐怖症だし、吃音だし・・・

 

富士急ハイランドに向かう高速道路で、富士山をみた僕は、その壮大なスケールに恐怖すら覚えました。
「富士山って、ちょっと怖くない?」と車を運転しながら嫁さんに尋ねると、「?」と訳の分からないといった顔をしていました。富士山が視界から消えるまで、重圧を受けながらもハンドルを握っていたことを鮮明に覚えています。

 

この様な『感受性』の高さには、吃音者特有の脳のメカニズムによるものだと僕は感じました。
吃音者はイメージ力や記憶力、想像力やひらめきを司る部分が優位に活動しているのです。

 

それでは、吃音の原因として挙げられる脳の構造や機能に関する要因をまとめていきます。

 

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脳波(EEG)に関する研究


脳波(EEG)に関する研究で明らかになった吃音者の特徴は下記2点です。

発話中、吃音がない人は左大脳半球が優位に活動するが、吃音のある人は右脳の左大脳半球と類似した領域が優位に活動する

訓練やセラピーを受けると、吃音がない人と同様に左大脳半球の活動が高まる

 

脳画像に関する研究


脳画像に関する研究で明らかになった吃音者の特徴は下記6点です。

発話中やどもっている時、右大脳半球が過度に活動する

右脳の前頭弁蓋部と右島が特に高い活動を示してる

どもっている時、左聴覚皮質は活動してない(聴覚に関する情報が処理されていない)

ウェルニッケ領域の側頭平面の対称性が良くない

左側弁蓋部(感覚、企画、運動の連絡を担う)の白質神経路の神経線維の密度が低い

治療やセラピーなどで流暢性が誘発されると、左大脳半球が優位に働くようになる

 

脳波(EEG)に関する研究

1931年~1983年に行われてきたEEG研究にて、発話中やどもっている時には右大脳半球(以下、当記事内では「右脳」とする)が活発な傾向があると報告されています。
この活発な活動は発話と言語をコントロールする左大脳半球(以下、当記事内では「左脳」とする)の組織と同じ場所で起こっているとされています。
吃音がある人は右脳の優位性が示唆されています。

 

1991年、脳血流測定(FCB)の研究においても、吃音がある人は脳血流測定の絶対レベルが低く、左脳の優位性は見られなかった。

 

さらに1995年の陽電子放出断層撮影の研究でも、吃音がある人は発話や吃音を生起中に右脳の活動レベルが高くなる傾向が示されました。
胎生期の発達過程で右脳に一次発話・言語領域が形成されるとの専門家の意見もあります。

 

吃音のある子どもは、発話のために左脳を使おうとするが、神経ネットワークが上手く機能しないために、右脳の組織を代償として使うのではと専門家は言います。
右脳の活動レベルと吃音には負の相関があることも発見されました。

 

脳画像に関する研究

吃音がある人は、発話をモニターしたり制御したりするための聴覚フィードバックを使っていない可能性があります。
また吃音生起中に聴覚処理が機能していないなどの研究報告があり、脳画像による研究では聴覚連合野とウェルニッケ領域の活動の欠如が指摘されています。

 

このため、吃音がある人にはFDA(遅延聴覚フィードバック)を使用すると流暢性が高くなるため、治療に用いられたりされます。
(吃音がない人にDFAを使うと吃音の症状がみられ、人工的な吃音発生装置となります)
またゆっくりとした発話は、発話モニタリングを促進するため吃音が生起しにくいことも脳画像の研究で明らかになりました。

 

2001年には磁器共鳴画像の研究にて、吃音の有無によってウェルニッケ領域にある側頭平面の大きさに差異があることが分かりました。
吃音のない人は左脳が大きく右脳が小さいが(左脳>右脳)、吃音がある人は左脳が小さく右脳が大きかった(左脳<右脳)と報告されています。

 

また脳回(ひだ)にも相違があり、この様な違いが情報の流れを妨げる要因になっているのではないかと専門家の間では示唆されています。

 

2002年の研究では、拡散異方性画像による研究によって、吃音のある人は左側弁蓋部の神経線維の密度が低いことが分かりました。
(左側弁蓋部の神経線維:脳の感覚や企画・運動などを繋ぐ役割)

 

終わりに

脳に関する吃音の原因についても、非常に多くのことが分かってきています。
今後、技術の進歩によってさらに多くのことが解明されることが期待できます。

 

ここでの重要なポイントは『右大脳半球が過度に活動』していることです。
冒頭でも記載した通り、吃音者が何故『感受性が高い』のかという謎は、脳の構造や機能に隠されていたのですね。
本来は話しをする時、左脳の活動が活発になるのに対し、吃音者の場合には右脳が反応してしまうと。
要は器用貧乏といったところでしょうか?

 

でも訓練やセラピーによって、左脳をしっかりと働かせることができるという事実には希望が湧きます。

自分の声を聴きながらゆっくり話すなどして、本来の脳の使い方を定着させましょう。

 

次の記事では、感覚情報処理についての吃音の原因を調査します。
感覚情報処理の研究においても、左脳の優位性が確立されていないとの裏付けがとれています。
続きは↓コチラからご覧下さい。

吃音の原因を徹底調査(1)~脳の構造・機能に関する要因~

吃音の原因を徹底調査(2)~遺伝的要因~

吃音の原因を徹底調査(3)~反応行動に関する要因~

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