ドクンっ
この経験は吃音者にとって、誰もがあることだと思います。
社会人になって10年以上も経ちますが、今でも「自己紹介」という言葉を聞くたびにドクンっと心臓が大きく脈を打ちます。
すんなり名前が言える時もあれば
詰まった末に、名前が出ることもあれば
前の人の拍手が鳴り止む前に発声したり
時には全く言葉が出ない時も。
僕は高校の時の自己紹介で、一切、言葉が出てこず、呆れられて順番を飛ばされた経験があります。
思春期真っ只中の僕には、恥ずかしさや悔しさや、絶望感でいっぱいでした。
これはきっと、一生忘れられないでしょう。
漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』でも、全く同じ場面が描かれており、当時の記憶がより鮮明に思い出されました。
前日の予行練習や
「自己紹介」という言葉に反応すること
自分の番に周ってくる場面など
本当にリアルに描かれています。
どもってしまうと、いつも自己嫌悪に陥ってしまい、「何で俺だけっ!」と涙が出てくることもあります。
他の吃音者を知らない
吃音の発症率は1%だと言われており、100人に1人の割合で吃音者がいます。
つまり日本には120万人の吃音がいることになり、首都圏の学校なら学年や学校に、少なくとも数人程度はいることになります。
でも僕は自分以外の吃音者を、滅多に見ることはありません。
これは吃音者が吃音を隠しながら生活しているからに他なりません。
ある程度年齢を重ねると、出ない言葉を別の言葉に言い換えたり、話すこと自体を辞めてしまうなど、吃音を隠すテクニックが身につきます。
公然とどもって話す人を、僕は見たことがありません。
そのため、吃音についての悩みを話したり共有したりする機会は皆無です。
今では『言友会』と呼ばれるセルフグループが全国各地で活動しているため、吃音の仲間を作ることは比較的容易になってきています。
「志乃ちゃん」の場合
漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の主人公である志保ちゃんは、重度の吃音に悩む女子高生です。
吃音に”重い”も”軽い”もないのかもしませんが。
僕の場合には、他人から見れば「どもりなんて知らなかった」と言われるけど、同じ吃音持ちの父からすると「お前のどもりは酷いな」と言われます。
僕自身、やっぱり長年悩み続けたことは言うまでもありません。
どもりの発生頻度については程度があるのですが、だいたい同じ様な『場面』で、同じ様な『感情』を抱き、同じ様な『周りの反応』があるのだと、志乃ちゃんを通じて知りました。
またどもりがあっても積極的に友達を作ろうとしている所や、友達の感情をいち早く察する場面などは、本当にリアリティがあります。
これは吃音者にしか描けない漫画だなと、本当に思います。
志乃ちゃんを描いた作者『押見修造』さんは、もちろん吃音者です。
吃音に悩んでいるあなたへ
漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を読んで見ることをお勧めします。
その理由としては『あなただけが吃音で苦しんでいるわけではない』ということが分かります。
また『吃音があるからといって、全てが悪いことだとは限らない』ということが分かります。
このブログを運営している僕にも吃音があって、あなたと同じ様に苦しんできました。
また押見修造さんも同じ様に苦しんできたことは、志乃ちゃんを通じて実感できるでしょう。
少なくとも、あなたには僕と押見修造さんとの悩みを共有することができます。
また日本に散らばる120万人の吃音者が、同じ様に戦っている姿が思い描くことができるからです。
あなたは1人ではありません。
漫画の”あとがき”で押見さんは、吃音があることで全てが悪いことだとは思わないと述べています。
その理由は吃音があったからこそ、漫画家として成功できたと語っています。
吃音によって言葉を吐き出すことができなかった分、内側にどんどん溜まる感情を、漫画という形で爆発させることができたそうです。
押見さんは漫画を通じてですが、世の中には様々な分野において爆発させた有名人がいます。
- アインシュタイン
- マリリン・モンロー
- 田中角栄
- ロドリゲス・ハメス
誰でも知っている様な有名人にも、実は吃音があったということはよくありますし、吃音をバネにして成功を掴んだ人も多くいます。
あなたにも爆発させる火種が見つかるかもしれません。
是非とも”あとがき”も一緒に読んでみてください。