「吃音のことは、吃音者しか分からない」とよく言われるのですが、コレ、その通りだと思います。
どんなに愛すべき自分の子供でも、その苦悩までは、あなたに吃音がない限り分かりません。

絶対に。

それには理由が2つあります。

一つ目は『タブー』であること。
二つ目は『言葉で表すことができない』こと。

 

吃音の話題は家族でもタブー

日本では昔から吃音に関する話題は家族でもタブーされており、あまり掘り下げて話すことはありませんでした。僕の家庭でも父と僕に吃音がありましたが、吃音の話題は皆無でした。
これには社会としての背景も関係しており、差別用語としての扱われてきたことによる影響が強いと言われています。

現代において、オープンな関係が推進されており、可能な限り吃音者であることを公言した方が良いとされています。
でも実際には、これかなりハードルが高いです。
吃音があるとどうしても内向きな性格になりがちで、それをオープンにすることはなかなかできません。

自分の弱点や欠点を自ら晒して、公言することなど、吃音じゃなくても嫌ですよね?

俺、デベソなんだー とか
うち、離婚してて とか
うち、借金がいっぱいあって とか

そんなこと人に言わないし、言いたくないですよね?

吃音もまさにそれで、なるべく人にバレないように接してしまうのが心理です。

 

言葉では表現できない

さらにもう一つ、壁があります。
それは『言葉では表現できない』という点です。

吃音(難発)を一言で言えば『言葉が出ない』になるのですが、言葉が出ない時に「すいません」とかは言えるんですよね。

不思議なことに・・・。

緊張してしまい頭が真っ白になったとか
急に話しを振られて考えがまとまらないとか
落ちつきがなく話しが伝わらないとか

そんなことではなく、言いたい言葉がハッキリしているのに、言葉にすることができないんですよね。

うん。
きっと、吃音がない人にとっては理解できないことでしょう。

吃音の原因が解明されていて、医療方法も確立されていれば、専門家達が難しい用語を並べて言語化するのだろうけど、そのどちらも結論に至っていないのが現状なんですよね。

 

環境調整法

そんな言語化することが困難な吃音ですが、漫画というツールを使うことで、かなりリアルに再現できるのだなと感心しました。
漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の作者である押見さんにも吃音があり、志乃ちゃんはもちろんのこと、周りの人の反応などが忠実に描かれています。

これを読んで頂ければ、吃音がある学生が、どの様な感情を持って、どんな反応をされているのかが分かります。

自分の子どもがこんな生活をしているなんてと、酷くショックを受けるでしょう。

でも、この漫画をオススメする理由は、ただ落ち込むためだけにしているわけではありません。
現状を受け止め、我が子の苦しみを少しでも和らげるために出来ることを模索してほしいと僕は思います。

先ほどもお伝えした通り、吃音はまだまだ未解明の事が殆どです。
でも分かってきたことや、効果の期待できる治療法なども存在します。

その中で、九州大学の菊池先生も推進している『環境調整法』はオススメです。
僕自身、両親に環境調整法をしてもらったら、どんなに心強かったかと思います。
吃音者は言葉がでないことも怖いのだけれど、周りの反応にはもっと恐怖を感じています。

それを環境調整法で、吃音についての理解があると心の負担は激減するでしょう。

まずは志乃ちゃんがどんな事を考え、どんな周りの反応があるのか。
それを理解するために漫画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』を読んで下さい。

その後で、菊池先生の本を読んでみることをオススメします。