吃音に関する書籍において、最も有名であり多くの吃音者を救ってきた『僕は吃音ドクターです。』が発売されて7年。
より読みやすく、より近代的な情報を盛り込んだ吃音ドクターこと菊池良和さんの最新作。

 

『さすが‼︎と言うほかない、絶対に外さない一冊です。

 

菊池先生の合言葉である『どもっていてもいいんだよ』という言葉に込められた、深い想いを綴った”吃音の世界”。

前向きに物事を考えられるようになり、
吃音がある自分を肯定できるようになり、
自分が好きになれる。

 

そんな人情溢れる本です。

あらすじ

1. 私の吃音体験
1.1 三つの症状
1.2 吃音の不思議
1.3 吃音を隠す努力
1.4 医者になる決心
1.5 吃音恐怖症
1.6 医師になる
2. 吃音の発症の原因
2.1 吃音はいつ始まるのか
2.2 悪者は母親?
2.3 180度の転換
2.4 急激な言語発達の”副産物”
3. 吃音治療の歴史と現在
3.1 吃音治療の始まり
3.2 「吃音を治す」から「吃音とどう生きるか」へ
3.3 吃音の軽減法
3.4 薬物療法
3.5 吃音は軽減していく
4. 吃音外来
4.1 年中 「吃音」という共通語を使う
4.2 年長 吃音はママのせい?
4.3 小学校一年生 吃音はそのうち治る?
4.4 小学校高学年 誤解されやすい二面性の疾患
4.5 高校一年生の女子 高まる社交不安障害
4.6 20歳 難しい就職
4.7 40代 吃音で退社を迫られる
5. 吃音と社会のこれから
5.1 吃音者の社交不安障害
5.2 聞く力
5.3 時代の変化と吃音

みどころ

 

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菊池先生の書籍を、まだ読んだことが無い方にとっては、どの章の話しも非常に興味深い内容ばかりだと思います。

 

僕は当書籍が『僕は吃音ドクターです。』のリメイク作品だと、陰ながら思っています。
上記書籍が発売されて既に7年が経っており、新しい情報や訂正したい情報などがあって、基本構成は『僕は吃音ドクターです。』を参考にして書かれたのでは?と睨んでいます。

 

僕としては下記の3つが見所であり、非常に感慨深いと感じています。

  • 死が頭をよぎる
  • 吃音者宣言
  • 『どもっていてもいいんだよ』の真意とは

死が頭をよぎる

これまで吃音者は吃音を”悪”と捉え、出来るだけ吃らないように工夫して、時には回避をしながら生活してきました。

しかし近年では、吃音についてオープンな姿勢が勧められており、公然とどもることが求められています。

 

何故、吃音をオープンにするのか?
何故、公然とどもる必要があるのか?
何故、吃音を晒さなければいけないのか?

それは、死が頭をよぎるからです。

 

挿入、助走、言い換えなどの吃音抑制のテクニックを使い始める”工夫”に始まり、
日直や発表会、人前で話す場に行かないようになってしまう”回避”をするようになり、
究極の回避として行き着くところが、自ら死を選ぶということです。

 

吃音と併発して起る障害の一つに、社交不安障害というものがあります。
実に吃音者の4050%が社交不安障害だと報告されています。
この社会不安障害の注目すべき点が、自殺企画率が2.6%と高いところです。
これはうつ病患者よりも高いとされています。

 

つまり、吃音者の100人に1人くらいの確率で自殺という選択をしてしまうのです。

 

『吃音から逃げる』ことに慣れてはいけません。
吃音と向き合い、自分と向き合う。
だからオープンな姿勢が大切なのです。

吃音者宣言

吃音のセルフケアグループに言友会という団体があります。

 

発足当初(1966年)は吃音の全治を目的とした集まりとして活動されていたそうです。
当時はまだ吃音を”悪”として扱われており、治さなければならないものとして考えられていました。

 

しかし10年後の1976年に、吃音と共に生きていこうとする”吃音者宣言”を発表しました。
吃音があっても偉業を成した有名人は数知れず、日本の総理大臣の田中角栄さんや、アメリカの副大統領のジョーバイデンさん、芸能人にはマリリンモンローさんなどにも吃音があったとされていますし、有名人で無くとも成功している吃音者は多く存在します。

吃音に支配された人生ではなく、吃音と共に豊かな人生を歩むまでの世界的な背景を、当書籍ではまとめています。

『どもっていてもいいんだよ』の真意とは

『どもっていてもいいんだよ』という言葉に込められたメッセージは、常に意識されて書かれていることを読み終えてると分かります。

 

それは締めくくりの文章にて、菊池先生がどような想いで『どもっていてもいいんだよ』という言葉を使っているのかが書かれています。

 

非常に胸打つ、心に響く言葉です。

おすすめPOINT

吃音のこと、吃音の歴史、吃音の治療について、外来でのエピソードと世界的な視野で吃音に関する全ての情報がまとめられていて、1000円を切るという価格に驚きです。

以前僕は菊池先生にメールをしたことがあり、その際に返信頂いた言葉の中に、印象的なものがあります。

 

吃音治療を行なっている方は、ボランティア意識でやっている

 

まさにその通りだと、この価格を見て思いました。
利益など考えず、ボランティアの精神をもって吃音の啓発行動をされている菊池先生を心から尊敬します。

是非、一読下さい。