僕には吃音があります。

 

自分がどのように吃音を発症させたのかは記憶にありませんが、小学校低学年の頃は、まだ吃っていなかったと思います。

 

父が自営業だったため買い物をすると領収証をもらうのが日課でした。
僕はサービスカウターにいって『領収証下さい、名前は○○○です』と言うのが好きだったことを覚えています。

 

しかし、小学校高学年の頃には吃音で困ったエピソードがあります。
野球チームに入っていて、他チームとの合同練習の際に名前を尋ねられましたが、吃って言えず変な目で見られたことをよく覚えています。

 

きっと、
“僕は○○の瞬間に吃りが発症した”
と言える吃音者はあまりいないと思います。

 

2005年に発表された吃音の始まりについての論文には、以下の様に書かれています。

  • 1日〜3日かけて吃音が定着する割合が41%
  • 1週〜3週かけて吃音が定着する割合が32%
  • 4週以上かけて吃音が定着する割合が27%

短期間の間に、発症し定着する割合が大半をしめていることが分かります。
吃音の原因は、体質や性格に関する要因もまちろんありますが、何かがキッカケとなって発症している可能性も十分に考えられます。

 

漫画『血の轍』でも、主人公はとある事件を引き金に吃音が発症します。

キッカケを作ったのは、母親でした。

 

 

過保護と規範性

僕は吃音に関する様々な書籍や商材を購入しては読み漁ってきました。
その中に、吃音の原因について、3つの要因が考えられると提唱している専門家がいます。

 

  1. 感受性が高いこと
  2. 資質
  3. キッカケ

 

注目したいのは3の『キッカケ』です。
このキッカケには家庭内にも家庭外にも存在します。
家庭内の場合には『過保護』と『規範性』が挙げられています。

 

過保護な状況というのは、親が必要以上に子どものことを心配することです。
規範性というのは過度な躾けを指します。
両者が混在し合うと脳内で混乱が起きてしまい、吃音になると報告しています。

 

まさに漫画『血の轍』では、これをリアルに再現していると僕は感じました。

 

僕の場合は過保護を母親からもらい、規範性は父親からもらいました。
しかし漫画『血の轍』では、そのどちらも母親からで、”愛”という名の”狂気”に満ちた過保護と規範性でした。

 

 

体質7割、体質以外3割

 

漫画というエンターテイメントでは、ある程度誇張した表現になっていますが、現代の見解では『体質が7割』で『体質以外が3割』であるとの見方です。

 

これは双子研究による成果であり、再現性のある信頼できるデータと言われています。

 

昔は母親の育児が発症の原因であり、
母親の対処の仕方が悪いから治らない
とされていました。

 

しかしこれは、様々な研究によって否定されている誤った見解です。

あくまでも漫画でありフィクションとして見ることをお勧めします。

 

 

子供にしてあげられること

最近、子どもの吃音治療で注目を集めているのに『環境調整法』と呼ばれるものがあります。

 

この環境調整法では、専門家から命の危機に関する注意を除き、全ての注意や躾を辞めるよう指示されます。
また習い事などについても制限され、子どもが本当にやりたいと思っているものだけを残し、その他は辞めるよう指示されます。

 

吃音がある子どもは話したい欲求が減少していることに加え、注意や躾によってその他の欲求までも制限されることにより、自分の感情を表に出せなくなる傾向があるといいます。

 

環境調整法は、本来の子どもの姿を取り戻すために行われます。

 

そのため注意したいのに出来ない親の精神が持たず、数週間で親が悲鳴をあげるとされています。
そんな親のサポートをしながら、子どもの吃音についても治療するのが、言語聴覚士というヒーローなのです。

 

漫画『血の轍』では果たして、そんなヒーローが現れるのか?

はたまた、母親の狂気は何処までも突き進むのか?

 

今後の連載が期待です!!